ものすごい勝手な思い込みなんですが、児童小説には、大人が「大人のままで子どものために」書いた小説と、大人が「子どもになって」書いた小説があると思う。なんかこう、児童小説を読んでいると、もはやいい歳のせいか、もはや「面白いなあ、と思うのは後者の印象がある本だったりします。(前者はどうも上から見ることが要求される謎解き系とかそういうのに多い気がする)(ええと、前者は「純粋に子供向けの本」ということなんだと思いますが。)
ということで最近読んだ本。同時期に怪盗ファントム&ダークネス EX‐GP1 (カラフル文庫)とかぼくがぼくになるまで (エンタティーン倶楽部)とかも読みましたが、一番面白かったのは

ぼくらのサイテーの夏 (講談社文庫)

ぼくらのサイテーの夏 (講談社文庫)

でした。
小学校で流行っていた「階段落ち」というゲームで怪我をした主人公が、同じゲームをしていた栗田と、学校から与えられた罰であるプール掃除をしながら、友情を育んでみたり、自分の家の問題などに向き合っていくお話。
冒頭がとんでもなく上手い。夏の暑さと共に増すとんでもない閉塞感と言うか、そういうのがものすごくにじみ出ている冒頭から引き込まれました。親への不満や、引きこもりの兄や、そいういうものへ対する、判然としない気持ちなどもものすごいリアル。しかも、直接語られているのではなく、なんとなく息苦しい気持ちが、一人称の小説の行間からただよってくるのがすごいなあ、と。だんだんと前向きになり、変わっていく状況や、ラストへのオチは多少とんとん拍子な感じも受けましたが、十二分に面白かったです。森絵都なんかが好きな人もいいんじゃないでしょうか。この作者の他の本も読んでみたいなあ。