ベガーズ・イン・スペイン

ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)

ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)

短編集。ガチガチのハードSFというよりかは、サスペンスタッチだったり文学的なテーマで固められていたりする地味ながら取っつきやすいお話が多かったです。なんかあんまり読まないタイプの本だったんだけど面白かった。
「ベガーズ・イン・スペイン」「眠る犬」は遺伝子操作により眠りを必要としない「素晴らしい」子供達が生まれたアメリカの話。能力的に優れ、性格も非常に明晰で勤勉な新人類たる「眠らない子供」に対して嫉妬と恐れともに迫害が進んでいく世界でのアレコレが非常に面白く、もっと読みたい! と思ったところで話が終わる。落とし方がどれも独特というか余韻を残しつつばっさり切る!という感じなので、かえって続きが気になります。同じテーマの長編も読んでみたい。
「戦争と芸術」は上の表題作のシリーズ二作が面白かったので、唐突にこの話でスペオペに突入してしまい「えー!」「なんでー」「やだやだー!」と思ったんですが、読み終わってみれば個人的にはこれが一番好きかな……。「理由」としては甘ったるいけどありそうありそう。地球人と「テル人」が星間戦争をしているという世界の話。
「密告者」はすでに発売されている長編<プロバビリティ>三部作とやらの原型と言うことで……「個人」と「現実」という感覚が地球人とは違う世界の話。テーマがかなりファンタジーかつ文学的なので、もしかしたら長編は辛いかもな…とは思った。この短編だけだと面白かったです。
「想い出に祈りを」ショートショート。「ケイシーの帝国」はなぜか途中で泣けた。「ダンシング・オン・エア」はジャンプ力などを強化されたバレエダンサーと片言ながら言語を操る番犬のお話。
表題作が面白かったので、<眠らない子供達>の同世界観を共有しているという長編が出たら読むかも。<プロバビリティ>三部作はあんまり惹かれないけど……。