架カル空ノ音1

幼い頃読んだ児童文学は、哀しく、けれど美しい話が多かった。私自身は、親から与えられたそれらの本が好きだった記憶はあまりありませんが…今になって印象に残っているのは確かにそんな「哀しい」お話も多いような気がします。あとがきで作者が「少年少女名作全集といったものが大好き」とおっしゃっている通り、そんな趣がある物語。

架カル空ノ音 1 (B’s LOG Comics)

架カル空ノ音 1 (B’s LOG Comics)

戦火を逃れるため、山奥でひとり暮らしていた医師・ジャックは、雪山で行き倒れていた少年を助けるが、その背中には美しい翼が生えていた。それは、今はもう絶滅したはずの"鳥人族"だったのだ―――。

人は興り、他は滅ぶ。そのことが切々と描かれている物語でした。消え行く"鳥人族"の滅びへの抵抗は、儚く、切なく、そして美しい。"鳥人族"の成長すると翼が抜け落ち飛びたてなくなるその生態も、その祭りの様子も興味深く、本当に医師ジャックの記録が存在するかのよう。せめて、鳥人族と人のかかわりが少しの希望へ繋がることを祈るばかりです。哀しい結末かもしれませんが、そのことも含めて、続刊にも期待。上手く着地して欲しい。

翼ある子らは 飛んでゆくがいい
――我ら 決して
滅びに安らぐ道は選ばぬ