昭和は遠くなりにけり
- 作者: 種村季弘
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 5回
- この商品を含むブログ (18件) を見る
タイトルに《奇想》とある種村季弘の本らしく、見知った近所であろうとなかろうとなにやら居心地が悪くなりそうな江戸・明治大正ごろまでの胡散臭い逸話でいっぱい。面白いです。やっぱりよく行く場所だったり家の近所だったりすると特に面白いですね。海に沿うように在る品川遊郭を想像して、想像できなくて、私も面影を探して歩いてみたくなりました。ほかにも色々とへー知らなかったー近所だけど行ったことねーとふむふむ感心しながら読みました。こうやって読むと、江戸から戦前までひとつづきだった時代が、戦後から大きく断絶してしまったようにも見えなくもない。ただ、この本の中でも何度も引用されている永井荷風も、失われていく江戸を大いに偲んでいたように、それらの感慨も多くは主観の問題なのかもしれませんが。種村の筆も、かつての東京を知っている分、風景から失われてしまった多くのものがもはや書物の中にしか見出せないような、そんな悲哀に満ちている気がします。けれど、この本のように”知っていたゆえにもはや見出せない”よりも、”知らないゆえに想像しどこかに面影を見出す”ほうがなんとなく前向きだなあと思ったりしました。ええとこれはちょっと前に読んだ「赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて (ちくま文庫)」を思い出しながらの感想です(でも前向きになるような本ではない)。
- 作者: 木村聡
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/03/01
- メディア: 文庫
- 購入: 9人 クリック: 123回
- この商品を含むブログ (22件) を見る