生れてはじめて意識しながら読んだSFの本アーシュラ・K・ル・グィン闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))でした。だから今でもSFといえばこういうファンタジーと融合したような小説が思い浮んでしまうし(実際問題、対象となるマーケットがなかったから作者は「SF」として出したなんという話も聞くし、思い浮かべてしまうのはおかしいのかもしれませんが)、そういう小説が一番好きです。(もしくは時代改竄系)

ということで、書評サイトでこの本を読んでいるのを見かけて、ついつい気になって読み直し……。読み返すと、うわあ、本当にSFじゃないや。改めて読むと、伝承的な雰囲気がものすごく強く出ている中編でした。でもSFの部分もある……というか、どうも当方、資料萌えの傾向がありまして、宇宙人の種別を記載した「簡便知的生命入門」みたいな本の抜粋が出てくると無性に嬉しくなります。
あらすじは全世界連盟からある星に派遣された調査隊が、隊長のロカノンをのぞいて全滅してしまい、ロカノンは星の種族と一緒に、隊を殲滅させた"敵"を追う、というストーリーですが(ものすごい大雑把)、民の書き方が、もう、いいですね(なぜだかものすごいLotRを思い出したんだが、気にしないことにする)特に知性の無い有翼種の都市に入り込んだ章なんて、美しくて気持ち悪くて、圧倒されました。あ、あと萌えもあるよ!(いらん)
もう一冊は
アジアの岸辺 (未来の文学)

アジアの岸辺 (未来の文学)

国書刊行会未来の文学シリーズは、第一巻のケルベロス第五の首 (未来の文学)が好みで、面白くて、買い続けているんですが、これは、本当に、なんかものすごい短編集でした。もともと不条理小説とかブラックユーモア系は苦手なわけですが、いちおうそういうものにも属するのだろうこの本は悔しいことにどの短編もものすごいキレがよくて、「うわーうわー」と眉を顰めながらもぐいぐいと全部読んでしまいました。なんというか、ものすごく、「頭がいいけど性格の悪い」本という感じ。本当性格が悪い。救われない。でも面白かった……のです……。