帰ってきました

明治時代の洋館を移築したというロッジ。夜には外気が零下十五度ほどになるせいか、窓の向うには2m近い氷柱が下がっている。あたりは一面の雪。多分1m近く積もっているのだろう。シーズンオフで宿泊客も少なく、雪の上には小動物の足跡以外何もない。これなら試せる……。私は思った。あまたのミステリー小説で見た雪の密室が……! 氷のトリックが……! 凶器も消えちゃう。
というわけで他の社員の人(27)と氷柱でチャンバラごっこしたり、雪の上で後ろ向きに歩いて「一方向しか足跡がない……!」とかやってきました。楽しかったよ。
でも社員の女性が2人も結婚することが唐突にわかったり、仲のよい社員が辞めることが判明したり、シャチョウが「実はこのあたりに土地を持っていて……」「俺もそろそろ余生が……」「でも仕事は続けるんだけれど……東京はなあ…」と推理したくない曖昧な言動を繰り返していて、すべて全然気付かなかった自分への罰として雪の上を走ってみたりしました。それをシャチョウに見つかり、
「そうか……F(本名)はまだ雪遊びしたい年頃かあ……」
とか言われました。いや、間違ってない、間違ってないのですが……。私は自分の人間性に歯がゆさを…っ。
「Fさんって鈍いよねー。普通に気付いてたかと思った」
そして同室の結婚する人には一晩近くのろけられ、最後には「どうしたら敏くなるんですか?」と逆に相談してみたりしました。

……そうなんだ……思えば事のきざしなどいくらでもあったんだ……。思えば、別のことだって、私はいつも気付かない。

(オチはないよ)