虐殺器官

近未来・先進国では個人情報認証による厳格な管理体制を構築、テロを一掃しつつあったが、一方、後進諸国では内戦や民族虐殺が凄まじい勢いで増加していた。その背後でつねに謎の米国人ジョン・ポールの存在があった。アメリカ情報軍・特殊検索群i分遣隊のクラヴィス・シェパード大尉は、チェコ、インド、アフリカの地に、その影を追うが…。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

噂の伊藤計劃のデビュー作『虐殺器官』を読みました。
正直、マッチョなミリタリー小説だと思っていたので、おすすめされなかったら読まなかったと思います。おすすめされました。読みました。特に前半は面白すぎて鼻血出そうになりました。
主人公の造形が「文化系」「内省的」「センシティブ」で括ることができそうな、(いってみれば思春期のようなメンタリティ/ぐるぐる感?)主人公だった、というのが個人的にはとても新鮮でした。それが、かなりハードなミリタリーアクション(SF)を繰り広げていく展開も面白かった。

カウンセリングなど必要なかった。
ぼくが必要としているのは罰だ。
ぼくは罰してくれるひとを必要としている。
いままで犯してきたすべての罪に対して、ぼくは罰せられることを望んでいる。

このフレーズなんかは、(説明できませんが)「こ、これは……(ゴクリ)」と思わざるを得ない。
ミリタリーについてもSFについても書き連ねるだけの能力がないのですが「こ、これは面白い……」と久しぶりにぶっ通しで読んでしまいました。ただ、話の着地点が「あー、やっぱそっち行くのかー」という思いがあったので、それが少し残念でしたけれども、色々な意味で(そう、色々な意味で)(行間行間)こう、ポテンシャルを感じる一冊でした……。ありがとうございました…。