バベルの塔
- 作者: 長谷川三千子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 文庫
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もちろん「ミステリー小説」ではないので、うっかりフィクションのように読んでいると冗長のようにも主観的過ぎるようにも思える部分はありましたが、それでも十二分に新鮮でスリリングでした。ページをめくるごとに「大筋だけ知っている」という創世記が、まったく違う物語として目の前に現れてきます。そもそも、旧約聖書の創世記……「律法(トーラー)」と呼ばれる部分が、複数の人物によって書き表されたものが公認されているなど全く知らなかったです。*1 この本ではJ資料(ヤハウィスト資料)と言われる紀元前900年、あるいはそれ以前、南王国ユダで成立したものを扱っているのですが、こんな解釈が出来るとは! こんな物語だったとは!と驚きの連続でした(作者が繰り返す「虚心坦懐に読むなら」という言葉は非常に象徴的だと思うのですが)。 この本に書かれている「ヤハウィスト」の信仰も、時代背景も、「作品」への思いも、挫折も、描かれたある意味"人間らしい"神もすべてが新鮮で面白い。
信仰の無い私からすると、この本がどういう意味をもつものなのかはわかりませんが、ひとつの「物語」としてとても興味深い一冊でした。他にもいろいろ読んでみたくなりました*2。