熱情の契約

熱情の契約 (ディアプラス文庫)

熱情の契約 (ディアプラス文庫)

名家出身でありながら現在は家族から離れ放蕩生活を送るクリスは、かつて自分の家の下働きであり恋人でもあったロドニーと十年ぶりに再会する。彼は貧しい労働者階級から英国有数の事業主まで成り上がっていた……。
一般書やライトノベルなど非BLとBLを行き来する作家さんは幾人か居れども、真瀬もとは個人的に特に好きな作家さんのひとりです。もともと自分の萌えツボに、BL云々は関係なく西欧萌え(時代萌え)というのがあるのですが、真瀬さんのその好みにぴったりとくる舞台設定選びといい(今回は1930年代ロンドン!)*1、その設定に沿った"ならでは"な障害を提供してくれることといい(今回は身分差)、何を投げられても大抵大喜び! ――といったわけで、自分的に常に基礎点が高いので、新刊が出るたびホクホクしながら読んでいます。
今回は雑誌掲載分より受→攻へと視点をかえてリライトされた二話目が特に良かったです。労働者階級出身の攻の方が、名家出身の受に対してひたすら劣等感に苛まれ、自尊心を守るために高圧的な態度に出てしまうっていう描写は読むだけで身悶える……。ううう。ひとつづきの物語としては、丁寧に描かれていた感情が、話の展開によって急に動いてしまうような強引な部分も多少見受けられましたが、それでも楽しく読めました。あと、真瀬もとはこのクリスみたいな破滅系のキャラクターを書くのが本当に上手いな…と思う。破滅系のキャラ&BLという意味では「スウィート・リベンジ (1) (ディアプラス文庫)」〜(全三巻)がやはり一番好きなのですが……。
次は租界時代の上海を舞台にした話が文庫化するようです。あーわかるーわかるんだーその舞台選びの方向性ーうおー。話自体は雑誌で読んだときはそれほどピンとこなかったのですが、文庫で読むとどうでしょうか。

*1:なんか、西洋・東洋問わず19世紀末〜20世紀初頭萌えってツボ持ちが多い気がするのですが(特にオタク女子)、もともとはどこから来ているのだろう…と時々考える……