秘密の花園

単行本をリアルタイムで読んで以来の再読でした。

秘密の花園 (新潮文庫)

秘密の花園 (新潮文庫)

横浜にあるカトリック系の女子高に通う3人の少女たちの心の葛藤を描いた連作。
いわゆる「女子高小説」「女子高マンガ」という枠内で測れる物語だとは思います。ただ、やはり作者の上手いところは「女子高モノ」という共通イメージという虚像の線上にありながらも、そこにかすかなリアルさ(微妙な言葉ですが)を上乗せできるところじゃないかな、と。その上乗せされたリアルは声高でない分、逆に記号からはみ出した現実味のある「少女」を強く感じさせている気がします。

私も女子高出身なのですが、個人的に女子高時代といえばまさに暗黒期でした。高校受験に失敗し、滑り止めで入った女子高の…最初の全校集会のときだったでしょうか。体育館に女子が何千人と鮨詰状態になっていたのを見、言いようの無い吐き気を覚えたのを今でも覚えています。おかげさまで、その三年間の記憶は、合わせてもその前後の中学・大学の一年間分くらいの密度しかありません。でもこれを読んで、ああ、そうだったかな…と思う点はいくつかありました*1。特に最初の那由他視点の「洪水のあとに」は、かなり同じようなことを考えていたような…気がする。作中、那由他が「壊れた」と説明している「理由」はきっと「物語」としての後付でしかなく、思春期の女子は「理由」も「物語」も無くとも、思春期を拗らせられる(たぶん、特に本に密接に付き合えば付き合うほど歪むのではないかと…ふと思ったりもしたのですが)
しかしこの本をを自分の過去を推し量ることでしか感情を重ねられなかったわたしは、もうこじれた思春期中にはいないんだな、とも同時に思ったのですけれども。

*1:リアルタイムで読んだ大学時代はもっとこう、リアルに思っていた気がするのですけれども