少年検閲官

ジャケ買い

少年検閲官 (ミステリ・フロンティア)

少年検閲官 (ミステリ・フロンティア)

何人も書物の類を所有してはならない。もしもそれらを隠し持っていることが判明すれば、隠し場所もろともすべてが灰にされる。僕は書物というものがどんな形をしているのかさえ、よく知らない―――。

……焚書を経て書物が失われた世界で、父から聞かされ憧れてきた「ミステリ」を追い求め、その終焉の地とされる日本にたどり着いた英国少年のクリス。彼は小さな町で奇怪な事件と、それを追いかける検閲官エノと出会うが……。
――書物は失われ情報源はラジオだけ、温暖化などの影響で多くの街は海の中に沈んでいる……とい仮想(現代)世界を舞台にしたミステリですが、淡々とした筆致と輪郭の甘い世界観が合わさって、味わいはファンタジー小説のそれでした。解決部分のバタバタと畳む感じが個人的にはあまり得意ではありませんが(こういうこと言ってるからミステリが読めない)、トータル的には設定も、精緻なのにやさしい読み口も、結構好きだったかな。
しかし、私が「ミステリ」というものをあまり読まなくなって五年ほど経つのですが(もともと読んでてもトリックとかそういうものはさっぱり意識してなかったんですけど…)、こう、「新本格?」「メタ??」を意識されているような部分には、普段接してない分かなり違和感が……。そこに慣れるまで読みにくかったです。作中には「"本来憧れられるはずの"『探偵』がアニミズム的な怪人のように徘徊している」「この「世界」には失われていくミステリの要素(『消失』や『密室』や『山荘』や…)をそれごとに閉じ込めたある種の記憶装置としての『ガジェット』が存在する」などなど、こう、読み手との共通認識に立った設定が出てきて、玄人ならニヤリとするのだろう部分がいっぱいあるのですが(あるのかもしれないのですが)、どうにもファンタジーな雰囲気と食べ合せが悪い気がして引っかかってしまいました。
そして「『記号』と『約束』を並べ、そして読み替えた物語ってなんなんだろう?」ってことを改めて思ったり。ある程度ジャンル化した「物語」では……「ミステリ」や「ライトノベル」……などが浮かぶんですが*1、洗練とともに「自浄作用(自壊作用)」としての読み替えの装置が発達していくのは当然だよなと思いつつ、頭の固い私からすると「さっぱりわからん!」っていう。――ええと、自分でもわからなくなったので途中で思考を放棄し、頑固親父になってみました。
なんやかんやいいつつ多分続編も読みます(少年可愛かったしね)(結局そこかよっていう)。

*1:「BL」もだと思うけれども、物語の「着地」が「目的」なので大きな揚げ足取り(セルフパロディ)が同じ分野では出来ないジャンルですよね…