黒い季節

黒い季節

黒い季節

デビュー作が再販されたとのこと。初読みです。読んでみたらわりと正統派な(?)伝奇物だった。

暴力団員の黒羽組の藤堂惣一郎は少年を車で轢いてしまう。明らかに死に至る事故。しかし少年は無傷で、記憶を失っていた。そのまま男の家で暮らすようになったその妖しいほどに美しい少年に、男は「穂」という名を与える。やがて少年の背に彫られた両目がない美しい無明龍の入れ墨に導かれるように、藤堂は彼の出自を辿り始めるが。
不思議な力を持ち、世界に贖われた存在――少年と男の再生の物語。

ついていた帯のあおりをそのまま書き写してみましたが、これを読んだだけで、「ああ…冲方丁は、はじめから物凄く冲方丁……」と思ったとか思わなかったとか、思ってしまった方は握手しましょう。
それにしても毎度のことながら読みにくい。冲方丁の本はいつも読みながらだんだん難しい顔になってしまう。残念ながら文章が単純に合わないだけなのだとは思うのですが、この本に関しては、「毎度のことながら合わない」と思ってしまった当時十八歳の筆力に恐れ入りました。豊富な暴力と凶暴なまでの情報量も現在の魅力のママといった印象でしょうか。構図としては物足りない部分もあるのですが……。「カップル」と「カップル」と「少年と男」って組み合わせが三組出てくるのですが、目的は違えど構図だけ抜き取るとかなり似ているので、混乱するしちょっと単調かな……。そのへんの書き込みと書き分けは物足りない。
しかし読み終わり、なぜか当時のことを語ったあとがきに鳥肌が立ちました。本編とあわせてすごいです。