輝け60年代

輝け60年代―草月アートセンターの全記録

輝け60年代―草月アートセンターの全記録

そこは前衛芸術の震源地だった!関係者50余人の証言と多彩・貴重な資料集成!……という本です。

労作な感じです。「資料の集積」なので、ただ読んで面白いかというと首をひねるのですが、ひとつひとつ読んでいるとその当時の情熱が伝わってきて、面白くてじわじわ一ヶ月くらい読んでた。っていうか読み終わってないのですけど…。「前衛」って何だろう? 「前衛精神」って何? ということを真剣に考えつつも(本当にわからない)、「いまとはちがう」そのことだけは判る気がします。

草月アートセンターは「1958年に勅使河原宏を中心として発足、さまざまな音楽・美術・演劇・アニメーション等々、ジャンルの枠にとらわれずに自由に集まり、創造・発表・批評し合える場を目指して活動を開始した。この活動が最も画期的だったのは、アーティストが自分自身で自作をプロデュースするというシステムで、これが商業主義の嵐から創造活動を守る上で非常に大きな役割を果たした」……というものですけれども、何よりも感じ取れるのは、個人のモチベーションによって、この活動が成り立っていたということ。そこには市場原理も介入せず、本当に理想的な形での「個」の動機が集まって成り立っている。そしてそれがさらに、社会的有用性を持ってしまっていた(今立ち戻るとそう「感じられる」ってことですが)ことにすら、正直驚きを隠せません。
この辺の時代って、最近再評価が進んでますが、もっとこう、物語的に読めるものがあればいいのにな。
そろそろ残せる最後の時代のような…気もします。