夜来たる

短編集。だらだらと再読しました。

夜来たる (ハヤカワ文庫SF)

夜来たる (ハヤカワ文庫SF)

「夜来たる」を読むと、自分の足元がぐらぐらするような不思議な感覚に襲われます。面白い。とりあえずこの短編の話などを。
「夜来たる」は『もし星々が千年に一夜のみ輝くなら、人々はいかにして神の都の存在を信じ、後世に語り継ぐ事が出来ようか』というラルフ・ワルド・エマーソンの詩の一節から端を発した物語。6つの恒星に囲まれた「夜の無い」惑星ラガッシュで、日蝕によって2000年振りの「夜」を迎えた人々の姿が描かれています。「夜」の訪れを予見し警鐘を鳴らす天文学者、勃興するカルト教団、そしてそれを嘲笑するジャーナリストたち、それらの「夜」を知らない人々が……我々でも実感を持って感じられる闇黒への恐怖に飲み込まれていく様と、そこに織り交ぜられるラガッシュの「黙示録」にある「文明は2000年ごとに滅び、生まれ変わる」という言い伝えは本当に現実のものとなるのか? そしてそこで「夜」とともに襲い迫るといわれる「星」とは何なのか? という要素が、読み手の恐怖と好奇心を煽って本当に面白いです。
<ネタバレ>そして「黙示録」に抗おう、信じまいとする人々が、太陽に囲まれているゆえに、意味理解できなかった数万輝く星々」に恐れ戦くシーン圧巻</ネタバレ>
そして、この物語を読むと思うのです。我々の世界でも、在るべきものが「見えない」でいるのなら…?と。空は見えるところまでで行き止まりであって欲しいものですね。壺中天の中にいたいわけではありませんが、世界が無限であると思うことは恐ろしい。
この本自体は絶版しているみたいですが、アシモフロバート・シルヴァーバーグの共著で、短編「夜来たる」後のエピソードを含めた長編版もあるよう。こっちも読んでみたいなー。
夜来たる 長編版 (創元SF文庫)

夜来たる 長編版 (創元SF文庫)