毒杯の囀り

1377年ロンドン。富裕な貿易商が自室で毒殺された。下手人と目される執事は、屋根裏で縊死していた。しかし、調査に訪れたクランストン検死官とその助手のアセルスタン托鉢修道士は、その事件を不審に思い……。

毒杯の囀り (創元推理文庫)

毒杯の囀り (創元推理文庫)

「14世紀ロンドン!」という一点に惹かれて、本屋で気まぐれに手に取ったのですが、これがかなり面白かった。
ミステリ的に面白いのかどうかは「……?」ですが、とにかく行間から匂い立つような時代の雰囲気が凄かったです。……夜は暗く恐ろしく、忙しい街は泥と汚物に溢れており、人の死は人の生活のすぐ傍にあり、しかし、深く息づいた信仰の中で人々は現代とは違う時間と感覚を生きている……ふっと身震いしてしまったほどそんな空気がしみじみ伝わってきました。
ストーリーもわかりやすいミステリ(仕立て?)で飽きさせず、登場人物もぐるぐるしている修道士とアル中寸前な検死官のコンビが良い感じ。脇役まで不思議とキャラが立っていて、この手の小説にしてはかなり読みやすいです。予備知識なしに買ったんですが、いろいろと個人的興味&嗜好にヒットするところもありまして、そういうのも面白かったです。ね。シリーズ第一作目とのことなので、続編にも期待。今作では大して出番は無かったんですが、妙に幼い国王(リチャード二世)が気になったので、今後の活躍があったりするといいな…。