Flaneur

戦後〜60年代の美術の本を読めば、現代美術が社会的有用性を持っていた(と思われる)時代がうらやましいなと思うし、70年代の本を読めば、売れる売れないはともかくみんな真剣で熱くて純粋だなーと思うし、バブル期のアレコレもコレはコレで楽しそうではあるよな…と思います。結局は「いまはもうない」…ないものねだりなのですけれど、過ぎ去ったものはやはり美しい。

夢の漂流物(エパーヴ)―私の70年代

夢の漂流物(エパーヴ)―私の70年代

そんなこんなで「歴史は誰が作っていくの?」という趣もある日本70年代美術と詩と批評の世界の証言の本。文は明晰でとても読みやすいです。
詩などはさっぱりわからないので「なるほどなあ」と読んだだけだったのですが、画家である中西夏之の章が個人的には印象に残りました(個人的に好きというのもあるのですが…)。作者がかつて書いたという中西評は非常に的確で腑に落ち、さらに言えば好みの切り口でした。カタログなどで読んだ中西の言葉で記憶に残っているのは「『絵画世界』と『現実世界』の狭間に画布と作家が居る(在る)」というものなのですが、作者が中西の作品に向けて引用したM・ブランショの言葉がその言葉に符合し、染み入ります。

似姿が原像に対して二次的であることをやめ、欺瞞が真実を称し、要するにもはやオリジナルではなくて、オリジンの不在が迂路デトウール回帰ルトウールの眩ゆさを帯びてそこにおいて四散している永遠の煌めきがある。そんな世界。

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NO.6 #5

NO.6 〔ナンバーシックス〕 #5 (YA!ENTERTAINMENT)

NO.6 〔ナンバーシックス〕 #5 (YA!ENTERTAINMENT)

矯正施設潜入編。
ううん、面白いことは面白いのですがーすっかり会話劇というか…。個人の"現実"に対する認識の違いを議論し、その語らいでページがどんどん埋まっていくと、その場がどんな凄惨な状況でも語られている言葉自体はどんなに重くても、物語としてはもどかしく(物足りなく)思えるものだなーーと思った。つまり、もうちょっと、話が進むとイイナ…。