われら若き途上に、失へる数々のものを偲びぬ
- 作者: あさのあつこ
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/02/22
- メディア: 単行本
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――おもしろかったおもしろかった! 久しぶりにあさのあつこの本を読んで真面目に面白いと思った。ちょっとだけ読もうと思って本を開いたのに、結局最後まで一気に読んでしまいました。ストーリーのミステリーかと思いきやライトノベル的味付けをしたお江戸小説という感じも嫌いじゃないのです。*1
そんなこんなで物語も普通読んでも面白かったのですが、個人的にこの物語のような「何か大事なものを失った後の物語」というのが物凄く好きなので、*2、それも併せて「おもしろいよーおもしろいよー」と言いながら読んでました。深い闇の中を歩んできた人間が強く光を求める感情が素直に読み取れたのも興味深かったです。光への憎しみや忌避の気持ちを描く作品が多い中、とてもまっすぐにそのあこがれが感じ取れました。そして、それでも一度踏み込んでしまった闇から抜け出すことの難しさ…やるせなさも…。
あと、ええと、まあ、遠野屋と信次郎の眩い部分が互いに反発し、互いに興味を持つ関係というのも非常にツボなわけですが……! <ネタばれ>しかし信次郎の闇の中にいる遠野屋の過去を引きずり出したいと思った気持ちには、興味はもちろんのこと、どこか暗い部分への共感があったからだと想像するのですが、なぜラストで彼は「殺すんじゃない」と言ったかな。行間妄想すればいい話なのですが、そのあたりの話は続編でじっくり読みたいようなー…いやいやー。</ネタばれ> うーん、遠野屋がどうなっていくのかということも含め、続編読みたいなー! でも、この本、物語としての出来がよかったので、続編読んじゃうとがっかりしそうだから読まなくてもいいか…という気持ちも…正直あったり…。
そう言えば、どっかの本のキャッチには「日々の営みの賛歌に満ちた時代小説」って書いてあったのですが、あさのあつこ的には「日々の営みの素晴らしさを"ただ享受できない人々"への想いとか思い入れ」なんじゃないかな、と。
だらだらと徒然になってきてしまいましたが、人間は「間」の部分が大事であって、他人との「間」を失った人間は、自律した人間でも完全な固体でもなく、単なる大きなものを欠いたヒトというケダモノでしかない。そんな話を昔したのもだらだら思い出してみたり。