キリス=キリン3 宿命の時
戦況が逼迫する中、女王アスリンは王位交代のためキリス=キリンを首都に招致する。その呼びかけに応え、危険を押し南に向かう決意をする王たちだったが……。
キリス=キリン〈3〉宿命の時 (C・NOVELSファンタジア)
- 作者: ジムグリムズリー,吟鳥子,Jim Grimsley,澤田澄江
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/12
- メディア: 新書
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3巻は、ラストよりも前半の緊張感がすごかったですね……。ジェセックスが想像を絶するまでの孤独の中に居ることが切々と伝わってきて、とてもやるせない気持ちになりました。物理的にも精神的にも彼は誰とも共有のできない場所にいて、最大の敵ドリューデンに対抗する手段を持つのは世界に彼一人だけ。その事実を真正面から受け止め、立ち向かい、遠く離れた魔術師の塔から一人きりで味方を守り、何日も何日も眠ることなく立ち続け、そして訪れる一瞬の休息の間でさえ…意識下ですら終わることなく続いたその戦いは、通じ合っているはずの王にさえも完全には理解できない領域の戦いであり、本当に彼は絶対的な孤独と緊張感の中でただ、苛まれている。その事実は、ベタなのだけれどもジェセックスの漏らした「寂しかった…」という言葉に端的に現れていて、泣けてきました。ここまで何処までも孤独な主人公というのもあまり見たことがありませんでした。そんなこんなで有体に言ってしまうと、彼は前半、戦ってるか戦ってるか時々いちゃついてるか戦ってるか、なのですけれども、なんかもう何やっててもいいよ……存分にいちゃつけよ……がんばれよ……という気持ちに……。
以下後半ネタを含みつつネタバレ(反転)
そんなこんななのですが、王位交代の石って外せたのか!! わはーエアファックスの戦いの後100年経ってタ!! …などなど後半の怒涛の展開はさすがにどっひゃーでした。いつのまにかいっぱい死んでる! しかも状況は悪くなってる! どうなっちゃうの、どうなっちゃうの。あと二巻くらい費やさなきゃ終わらないんじゃないの。……と思ったら、意外とあっさり終わったのですが……。それもびっくり。個人的には25章くらいからせめて3倍くらいのボリュームは欲しかったかも……。ドリューデンを滅ぼす方法とか、イー神の扉がうんぬんとか、"二つ名"の人々のその後とか、妄想はできますが、それまでのボリュームたっぷりな書き込み方に比べるとえらいあっさりと……。うーむ。つまり最終的には、最後まで残る二つ名=「ジェセックス・イーロン」ということで、王位交代制も消滅…ジェセックスが「この文章」を書いている時点では王も……ということなんでしょうね…。二巻のものすごく思わせぶりな書き方からすると、悲しい話にならなくて良かったような悪かったような!なのですが。ゲームだのファンタジーだの大好きな立場からすればこのアッサリ事実列挙な「後記」みたいなのも燃えますが! いやいや、しかし、満足度からすると一巻、二巻のが上だったかもですね…。
ああ、でも後半の
王はいつも僕を恐れていた、そう感じた。ただ、僕が分かっていなかっただけだ。
は、すごくよかった。
いやいや。でも、トータルしてもとても面白かったです。ありがとうございました。長い長い命を持つ「二つ名」の人々も、アーセンの森に帰らねば老いていく、とかそういうちょっとした設定もとても好きでした。面白かった。
C☆NOVELSにはこれに懲りず(?)今後とも地味でステキな翻訳ファンタジーをいっぱい出してほしいものです!(というか、もーっと、おねがい!)(まいめろ)