キリス=キリン2   魔術師の塔

ついに反乱の狼煙をあげた森の王キリス=キリンを鎮圧するため、女王と魔術師ドリューデンは《白の魔術師》を戦場に送り込んできた。ジェセックスは魔術に対抗する術を持たぬ王を守るため三女神に逆らい禁じられた魔術を使うが……。

キリス=キリン2 - 魔術師の塔 (C・novels fantasia)

キリス=キリン2 - 魔術師の塔 (C・novels fantasia)

思わず本屋で「デテルー! キターーー!」と(内心)叫んでしまった一冊。いつのまにこんなに楽しみにしていたんだ……自分でもきもちわるびっくりです。一巻の感想のときは大して大してという感じでしたが……あれからなぜか一巻を五回くらい読み返したり、続きが読みたくてアメリカのアマゾンうろうろしたり(あっちでも品切れだったよ!)(そもそも買っても大して読めないよ!)していました……。あんな情景描写ばかりで埋め尽くされたムソい(方言)小説なのに……なんでツボにはまったんだろう。地味でほもでファンタジーというのは確かに「それはもう、大好きです!」という感じではあるのですけれども…。(ちなみの一巻の酷い感想→id:reri:20050522#p2)(あとおまけでid:reri:20050523)
そんなこんなの二巻ですが、相変わらず情景描写がものすごく多いので視界は無駄に黒いし(ちゃんと読むと眼前に情景が広がるような美しさなのですが、いかんせんなげー)(でもらせん状に光の昇ってくる塔の描写とかすごいいい)、翻訳モノっぽいなんともいえない文章の歯切れの悪さ…「僕はレベル5の魔法の段階に到達した!」みたいな(レベル5…)(しかもそれがいまいち話のトーンから浮いている)ところどころしょんぼりするところも多いのですが……。……が。おーもーしーろーいー。おもしろいよーこれー。おもしろいー。王と主人公の少年の愛うんぬんはさておき(前半はほとんど接触ないし)ここまでガチにシビアな状況で戦闘状態にあるというファンタジーはあんまり読んだことがない、です。とくに、キリス=キリンの陣営に、魔術の攻撃の危機が迫ってくれると知ったジェセックス(主人公)が、魔術の師である三女神に背いて馬を駆けて《白の魔術師》と相対する場面など、ものすごい緊迫感のなかで激しい戦闘が展開されていて、それがものすごく面白くてうひゃうひゃ言っていました(ぎりぎり内心で)
なんなんだろうな。ネタバレになってしまうので後に書きますが、ある程度予想通りに物語は展開されていくのですが、それが予想よりちょっと意外な要素を含んでいたり、思いのほか描写がよかったり、その、「ちょっとずつ予想を上回っているところ」が読んでて楽しいのだろうなあ。
後半のへぼんなBLみたいな展開は読んでいてかなり読んでいて気恥ずかしくなったのですが、トータル的にはとても面白かったので、早く続きが読みたいでございます。次が最終巻かー。
あ、ちなみに、冗談でも行間裏読みでもなんでもなく、ガチでほもなので、免疫ない人には私はお勧めできません…。
(以下ネタバレ)
ジェセックス=イーロンというのはかなり予想通りだったので、それほど意外性はなかったのですが、まさかジェセックスがドリューデンの子孫だったとはな……。二つ名の人って本当に長々生きているのですね。この巻で、二つ名の人の仕組みもわかって、それもそれで面白かったです。(しかしジェセックスはもう二つ名になったのかな?)(よくわからなかった)(もう一回読もう)
しかし、すごい、ほもですね。ジェセックスを寝所に連れて行きたい王と行きたいジェセックスと、「ひーー。まだジェセックスは成人してないのでやめてくださいーー!」と押し留めようとする周囲(そして論点はそこ)、という構図がなんだか笑えました……。「僕はもうイーロンという名前を貰ったんだから、子供じゃない! 寝所を選ぶ権利がある!」と言っちゃう主人公もすごいですけど……。15歳め……。あと初夜の様子などがものすごくへぼんかつ、割りと詳細だったので、読みたい人は読むといいと思います。
それにしてもこの小説は後年のジェセックスがこの頃を思い出して書いている、という形態を取っているのですが、この2巻の後半からもう、なんかその後の悲劇…というかなんというか(少なくとも王がアレなんだろう)が、がんがん仄めかされていて「知りたくないー知りたくないー」という気持ちに……。
(ネタバレおしまい)
それにしても、日本だったら絶対どこからも出ない小説、という気がします。そういうのが翻訳本の面白いところでもありますよね。