カリスマ/犬の王―GOD OF DOG

父親に虐待されて育った少年アーチャー。誰にも屈せず、誰にも支配されない彼は、障害を持つ無垢な兄を守りながらNYのコーヒー市場で働きはじめる。一方、新米刑事のコーキは、捜査の一環として麻薬取引の現場でもあるその市場に潜入していた。90年代半ばの作品の文庫化。

カリスマ 1 (宙コミック文庫 BL SIDE)

カリスマ 1 (宙コミック文庫 BL SIDE)

カリスマ 2 (宙コミック文庫 BL SIDE)

カリスマ 2 (宙コミック文庫 BL SIDE)

復刻や版元の消滅ののちに、「BLの金字塔」がさらに文庫版になって再お目見え。ついでに復活した版元から続編も発売。
まず『カリスマ』を読み直し「やっぱりおもしろいなーーー」とひとり頷く。読んでいるとBLを読み始めた10数年前の、少女漫画よりも少年漫画よりも何よりも何よりもBLが自分の心に寄り添ってくる、と感じた気持ちがじわじわと蘇ってきました。改めて読むと表面的には今で言う「雰囲気BL」で、「かなり昔にBL雑誌に連載されていた」ということだけ頭に入っていれば誰でも読めそうです。「漫画」としても、その手に汗握るハラハラなドラマ性、とっても面白いです。欲を言えば、もっとこう、書き込んであれば、か。そうすれば十二分にBLという枠で語らなくても成り立つ物語になってたかも。
そんなこんなですが、改めて「BLとして」作中ふっと改めて感じ入ったのは以下の部分でした。主人公のアーチャーが刑事であるコーキに心情を吐露する場面です。

俺は 俺が
帰属できる場所が欲しい
国家でもなく 人種でもなく ――――家族でもなく―――…
俺を必要とする場所 俺の存在が 否定されないどこか……

読んで、思わずため息。……このあたりです。もちろん、ここでは物語として具体的な「国家」や「家族」という言葉に象徴化(明文化)されていますが、もっと感覚的な意味での帰属意識の欠如、自分がどこに立てばいいかわからないという不透明感は、確かに読んだ当初自分の手の中にあった不安だったな、と、思い出すことができました。

犬の王―GOD OF DOG (ビーボーイコミックス)

犬の王―GOD OF DOG (ビーボーイコミックス)

そして『カリスマ』その後を描く新刊。長年「続きが読みたい…! 続きが読みたい…!」と思い続けたこともあって大喜びです。ただ、面白かったとはいえ……人は同じコアとテンションを保つのは難しいと改めて思う部分もありましたが……続編のテーマは「母親」、そして「血の因襲」とのこと(『カリスマ』は「父親」と「家族の崩壊」…らしい)。『カリスマ』を読んだ印象として単純に母親的な役割というと、アーチャーにとってのコーキが思い浮かびましたが、どうなっていくのでしょうか。現時点ではこの一冊だけの評価が難しいかも。ジガーとの戦いも見たいんだ…! ちゃんと続きが読みたいです。宜しくお願いします……(明後日に向かって)