ラスト・イニング

ラスト・イニング

ラスト・イニング

「バッテリー」屈指の人気キャラクター瑞垣の目を通して語られる、彼らのその後の物語――……ということで、本編から数ヵ月後、高校に入学した瑞垣たちの姿が描かれています。この本をひとつの補完とみるか、華麗なる蛇足とみるか、読む人によって捉え方が違ってきそうな一冊でした。
自分が、一番、びっくりしたのは豪の変化が端的に言葉で書かれていたこと。引用はしませんが、ある一箇所にわりとびっくりした。
瑞垣のこの描写はいいな。瑞垣の興味が巧ではなく豪に行く、っていうのは確かにすっきり納得です。

永倉は稀有なピッチャーだ。技量ではなく身体能力ではなく覚悟という面において、類稀なやつなのだ。信じきる覚悟、信じきる力、信頼などという生温いものじゃなかった。そんな生温かな、小奇麗なものに換言できる覚悟じゃなかった。もっとどろどろとした、不気味なほどうねり狂う意念だった。それが内側から永倉を侵食し、変質させる。

ふつうに面白かったですし、この一冊で「バッテリー」という物語は、まとめてきれいに「オチ」たのかもしれませんが、タイムラグなく本編とこの本を一緒に読んでいたらちょっと許せなかったかもしれません。…うーん、わかりませんが。