「雲雀」佐藤亜紀(著)
第一次世界大戦前後のオーストリアを中心に描いた、「感覚」を持つものたちのハードボイルドのようなSF小説のような……。
読んだった。結局ハードカバー買っちった。読み始めると取っ掛かりですごくわかりにくくて時間が掛かるのは、この人の文章がずいぶんと説明が少ないからなんだろうなあ、と。登場人物のほとんどが、「感覚」=人の心を覗けたり、操れたりする超能力、のようなものを持っているけれども、それに関しての説明はほとんどなくて、ただ「感覚」と書いてあるだけ。地名にしろ団体名にしろ個人名にしろ、それに関しての説明はほとんどない。「行間から感じろ、むしろ知ってろ!」という感じなのです。だから取っ掛かりは読みにくいんだけれども、ひとたび登場人物の関係や状況がわかってくると、それだけ文章が研ぎ澄まされている分、打てば響くというか痒いところに手が届くというか、もう本当に面白い。きゃー。過剰な盛り上げとかも無い分、ラストはあっさり風味なのですが、その潔さもいい感じ。翻訳小説で、特に19世紀20世紀初頭くらいの文芸系が好きな人なんかは合うのではないでしょうか。内容に関しては姉妹編というか続編というかなので、単品ではお勧めしにくいかも。それにしてもジョルジュ…。こういうストイックなキャラはこういうラストは個人的には好きくなかったり。たり。
私はこの佐藤亜紀みたいな日本ファンタジーノベル大賞出身作家が結構好きです(揉めてたみたいですが)例をあげると山之口洋とか高野史緒とか…。