実家にて。
「どうしてうちの女どもは足腰弱いんだろうねえ」
老人ばかりになろうとしている親戚たちが言い出しました。口々に「そうだそうだ」「確かに」と同意する声が。足腰……か。思えば確かにうちの祖母も足が悪い。他にも足腰の悪い大叔母がいた気がする。
するとある一人の大叔父が「そう言えば、うちの家、神社があるじゃねえか? なんか明治くらいの先祖が移築したアレ。あれ、確か足腰の神様だぞ? あれをお参りしてないからじゃねえか? バチがあたったんだ」と言いました。「ああ、あったあった、聞いたことがある」とみんなが頷きます。私は初耳でした。みんな市街地に住んでいるくせに神社? 胡散臭く思ったものの、興味を惹かれ尋ねてみました。
「どこにあるの? それ?」
「・・・・・・・・・・・・」返ってきたのは沈黙です。誰も知りません。
でも気を取り直し「祖父ちゃんなら知ってるよ!」と誰かが行ったので、隣の家でのうのうと一人お茶を飲んでいた十二人兄弟の長男の私の祖父に話を聞きに行きました。すると「ああ、それなら「××の××に…」とすぐに返答が。おおお、知ってる! なんとなくわかるよ、その場所! まさかそんなところに先祖がどこかから移築したらしい神社があろうとは!(限りなく胡散臭い)
俄然興味を引かれ、足腰強化をお願いするためにみんなで噂の神社に行きました。
行きました。
行きました。
「わあ、意外と大きい。住めるじゃん、ここ」「名前見る限りうちと全然関係ないねえ」「というか汚いなあ」「なぜ手水所の横に汚い自転車が! 車庫代わりか?!」「というか鳥居が二つ! 稲荷もいるし、名前も大明神って…」「お稲荷さんだねえ。なんで足腰の神様なんだろうねえ? お稲荷さんといえば普通は商売の神様…」
明らかに適当な情報がいっぱいでした。嘘臭い。勝手なでっち上げっぽい。
「でもまあ、うちが移築したって話は本当だと思うよ。確かご本尊が一応あって、でもここに置いておいたら盗まれるからって、拓本だかなんだかを取って表装した軸だけ収めてあるって聞いたことがあるし…」と、場所を知らなかった大叔父さんが、本当っぽい情報を思い出したようにつぶやきました。ううん。でもそれだと……。
「で、ご本尊は?」
「うーん。曾お祖父ちゃんが持っていたはずなんだけど………」「見たことないねえ」
「借金の形に売ったんじゃないの?」
そんなこんなで借金の形疑惑だけ残し、休日は更けていきました。