オブ・ザ・ベースボール

「ファウルズ」という名前の小さな町には、年に一度ほどの頻度で「人が降る」。その町のレスキューチームには「バッド」と「ユニフォーム」が配布されているが……。

オブ・ザ・ベースボール

オブ・ザ・ベースボール

写真を見る。写真自体は二次元の画像でしかない。しかしわたしたちは両目でその距離感を測り、容積を想像し、それを三次元のものとして脳内で再生する。本も同じ。読みながら情景を脳内で思い浮かべ、そこに描かれている世界を想像する。それが自然であればあるほど、自分の世界に近ければ近いほど、共感と(もしかしたら感動を)呼びよこすのかもしれないけれど、円城塔の小説を読むたびに付きまとうのは、自分の描写から想像し思い描く情景が「……これでいいのだろうか?」という戸惑いと、その深い困惑感からくる愉快さのような気がする。
なまじ文章が平易なために、「人が降る田舎町を歩くバットとユニフォームを着たレスキュー隊」を想像するのは酷く容易だ。だけど、そこには共感もなければ感動もない、あるのは、自分や、想像力が試されるような壊されるような愉快さがほとんど。
読んでいると「言葉というものは面白いものなんだなあ」と言葉の力を信じられる気がしました。
合わせてこっちも。
Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

Self-Reference ENGINE」のような、ワンアイデア・ストーリーの集積のほうが好きかな、と思いますが、個人的には叙情的な「Goldberg Invariant」が好みでした。悲しいことにさっぱりわからん話とかもあったけれども!
あと円城さん伊藤さんの対談の載っていた「SFが読みたい!2008」も面白かったです。
SFが読みたい!〈2008年版〉発表!ベストSF2007 国内篇・海外篇

SFが読みたい!〈2008年版〉発表!ベストSF2007 国内篇・海外篇